2010/10/08 (更新日:2010/10/08)
「お父さん、安全に帰ってきて」 ライダーの心にひびくステッカー
■奈良・月ケ瀬、5月から事故ゼロ
「お父さん、安全運転で帰ってきてね」。こんなメッセージを書き込んだステッカーが近畿屈指のツーリングスポット、奈良市月ケ瀬の道路沿いにある休憩所 や自動販売機に張ってある。仕掛けたのは奈良県警で、10代で夢中になったオートバイに再びまたがる「お父さんライダー」の増加で40代男性の事故の急増 に歯止めをかけようと発案した。するとステッカーが張られた今年5月以降、月ケ瀬周辺でオートバイ事故はゼロ。検問より効果を発揮しているという。
今年5月、月ケ瀬に通じる同市邑地町の県道で、大型オートバイが転倒、運転していた男性=当時(43)=がトラックにはねられ死亡した。県内で今年 1~8月までに排気量750cc以上の大型オートバイが絡む事故は32件発生し、年齢別でみると40代が約半数を占めていた。
警察庁によると、全国でも10年前と比べ、昨年はオートバイ乗車中の負傷者が約5万7千人から約5万1千人に減少したものの、40代の負傷者は約4千人から約8千人に倍増。死者は約30人から3倍の約90人に跳ね上がっているという。
県警交通企画課は「就職や結婚でオートバイから離れていた人が、40代になって生活に余裕を持ち、子育ても一区切りついて再び乗り始めるパターンが多い のでは」と分析。県警は県外からのライダーも多い月ケ瀬周辺の休憩所や自動販売機などに、「お父さん、安全運転で帰ってきてね」というメッセージ入りのス テッカーを張りだした。
死亡事故があった5月以降に始めたこの作戦。例年ならこの時期、月に数件は発生する月ケ瀬周辺でのオートバイ事故は10月5日現在でゼロ。実際に、ツー リングに来てステッカーを見た同県大和高田市の会社員、戸谷一夫さん(45)は「無事に家族のもとに帰らないといけないと思った。亡くなった人は同世代で 人ごとではない」と話した。
奈良署の奥田弘昭交通1課長は「若いときとは違い『お父さんライダー』には帰りを待つ大事な家族がいる。自分のためだけでなく安全運転を心がけてほしい」と話している。 (ニュースより)